静寂
一人暮しを始めた頃は、絶えず音が聞こえていないと落ち着かなかった。
ご飯を食べている時や本や漫画を読んでいる時、お風呂に入っている時でさえもテレビはつけたままだった。
でもようやく最近、無音であることに慣れてきたかもしれない。
テレビをあまりつけなくなった。
いや、無音ではないか。
じっと耳をすませていると、年代物の冷蔵庫は“ジー”と意外と低音で鳴っていて、その音にかぶさるようにしてお風呂場の換気扇が少し高音で鳴っている。
そしてこれまた年季の入ってきた時計の針を刻む音。
時々、部屋の中でミシッと木材の軋む音までするではないか。
文明のある時代では、もはや無音というのは存在が難しいのだろうか。
せめて、換気扇だけでもと思い、止めてみた。
少しのあいだ静寂が訪れる。
今はこの静寂の流れの中に身を潜めよう。
こうして目を閉じていれば、お祭りのパレードが遠ざかって行くように、ざわめきや喧騒も遠くへ遠くへと行くような気がする。
そして私は、だいぶ前に届いたWi-Fi ルーターを横目で見ながら現実逃避中。
そろそろ設置しないとだけど、説明書読みたくないよー。