もやし

JOIN TO JOY

2012年01月14日 23:56

それは、まぎれもなく、もやしなのであった。

ヒョロンと長く、髭も取られていない。

新鮮でもなければ、傷んでもいない、もやしが、ステンレスの流し台の上に1本だけ横たわっていた。



こ、こわい。


なぜなら、今、私の冷蔵庫の中にはもやしなど入っておらず、ここ何週間も、もやしを食べた記憶すらないからだ。


そんな私の気持ちなど、素知らぬ顔で、
どちらかというと、堂々とした雰囲気まで漂わせながら、横たわる1本のもやし。


そんなもやしを見つめながら、私は考えを張り巡らせていた。




吉田戦車のマンガみたい。


昔、なかったっけ?
食べても食べてもコンニャクがなくならないと思っていたら、“コンニャク男”というのがいて、密かにコンニャクを入れているっていう。




はっ!


も、もやし男。

もやし男の仕業なのか?



・・・・。

はっ!

いけない!
おもいのほか、もやしのことだけを考えてしまっていた。


もっと他に考えるべきことがあるだろっ、わたし。

と言いながら、ちぎったトイレットペーパーで1本のもやしを包みこむように取り、ゴミ箱へ捨てた。



もやし男が陰でほくそえんでいることなど、この時のわたしは知る由もなかった。



つづく。


と見せかけて、おわり。